2.4 正規直交基底

基底の中にもある条件を満たすものを正規直交基底という.

Definition 2.5 (正規直交基底) ベクトル空間\(\mathbb R^{n}\)のベクトルの組\(\boldsymbol x_{1},\ldots,\boldsymbol x_{n}\)が以下を満たす時,これらを正規直交基底という.

\[\begin{align} \boldsymbol x_i^\top \boldsymbol x_j = \begin{cases} 1 & (i=j) \\ 0 & (i\neq j) \end{cases} \end{align}\]

正規直交基底とは,互いに一次独立かつ,全てのノルムが\(1\)であるような基底である.もっと簡単な例としては基本ベクトルの組が挙げられる.

基本ベクトル\(\boldsymbol e_i\)とは,\(i\)番目の要素が\(1\)でそれ以外が\(0\)であるようなベクトルである.\(\boldsymbol e_{1},\ldots,\boldsymbol e_{n}\)は明らかに\(\mathbb R^{n}\)の正規直交基底である.

次の定理は,なんでも良いので基底を一つ得れば,正規直交基底を作り出すことができることを示している.

Theorem 2.6 (グラム・シュミットの直交化法) \(n\)次元ベクトル空間\(V\)の任意の基底\(\{ \boldsymbol w_{1},\ldots,\boldsymbol w_{n} \}\)とする.このとき次の手順によって正規直交基底を得ることができる.

  1. \(\boldsymbol v_1' = \boldsymbol w_1, \hspace{5mm} \boldsymbol v_1 = \frac{\boldsymbol v_1'}{\| \boldsymbol v_1' \|}\)

  2. \(\boldsymbol v_2' = \boldsymbol w_2 - (\boldsymbol w_2^\top \boldsymbol v_1) \boldsymbol v_1, \hspace{5mm} \boldsymbol v_2 = \frac{\boldsymbol v_2'}{\| \boldsymbol v_2' \|}\)

    \(\vdots\)

  1. \(\boldsymbol v_n' = \boldsymbol w_n - \sum_{i=1}^{n-1}(\boldsymbol w_n^\top \boldsymbol v_i) \boldsymbol v_i, \hspace{5mm} \boldsymbol v_n = \frac{\boldsymbol v_n'}{\| \boldsymbol v_n' \|}\)

以上の手続きで得られる\(\boldsymbol v_{1},\ldots,\boldsymbol v_{n}\)はベクトル空間\(V\)の正規直交基底となっている.

既に基底として採用されているベクトルに対して,適宜次のベクトルが直行するように変換していく処理をしている.