1.19 正定値・負定値・半正定値行列
\(n\)次の対称行列\(A\)について,任意の\(\boldsymbol x \in \mathbb R^{n}\)に対して
\[ \boldsymbol x^{\top} A \boldsymbol x = \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^n a_{ij}x_ix_j \] を行列の二次形式と呼ぶ. 二次形式の結果の性質によって行列を次のように特徴づけることができる.
Definition 1.7 (正定値,負定値,半正定値) \(A \in \mathbb R^{n\times n}\)について,二次形式を
\[\begin{align} Q_A(\boldsymbol x) = \boldsymbol x^{\top} A \boldsymbol x \end{align}\]
とする.この時\({}^{\forall}\boldsymbol x \in \mathbb R^{n}, \boldsymbol x \neq \boldsymbol 0\)に対して
- \(Q_A(\boldsymbol x) > 0\)が成り立つ時\(A\)を正定値行列という.
- \(Q_A(\boldsymbol x) < 0\)が成り立つ時\(A\)を負定値行列という.
- \(Q_A(\boldsymbol x) \leq 0\)が成り立つ時\(A\)を半正定値行列という.
また,正定値行列については以下の定理が成り立つ.
Theorem 1.1 (正定値行列の正則性) いま,\(A \in \mathbb R^{n\times n}, \boldsymbol x \in \mathbb R^{n}\)とする.このとき
\[\begin{align} Q_A(\boldsymbol x) > 0 \Rightarrow A^{-1} \textrm{ exists.} \end{align}\]
が成り立つ.
これは,正定値行列であれば必ず逆行列が存在することを保証している.ただし逆は成り立たないことに注意されたい. この定理は,逆行列の存在条件と行列の固有値・固有ベクトルを利用することで証明することができる.