1.21 行列の基本変形
行列には基本変形(elementary transformation)と呼ばれる操作があり,これらはある特定の行列を掛けた結果と見なすこともできる. その特定の行列を基本行列と呼び,それぞれ次のような定義となっている.
Definition 1.10 (基本行列) 次のような行列を\(n\)次の基本行列と呼ぶ.
- \(P_{(i;c)}\)
これは左から\(A\)との行列積を取った時に,\(i\)行目の要素を\(c\)倍する行列である. 具体的には,\(I_{n}\)の\((i,i)\)成分だけが\(c\)となっているような行列である.
\[\begin{align} P_{(2;3)} = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 3 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \end{align}\]
- \(Q_{(i,j)}\)
これは左から\(A\)との行列積を取った時に,\(i\)行目と\(j\)行目を入れ替える操作である. 具体的には,\(I_n\)の\(i\)行目と\(j\)行目が入れ替わった行列である.
\[\begin{align} Q_{(1,3)} = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \end{align}\]
- \(R_{(i,j;c)}\)
これは左から\(A\)との行列積を取った時に,\(j\)行目を\(c\)倍して\(i\)行目に加える操作である. 具体的には\(I_n\)の\((i,j)\)成分が\(c\)となっている行列である.
\[\begin{align} R_{(1,2;3)} = \begin{pmatrix} 1 & 3 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \end{align}\]