2.6 線形変換と直交行列

RnRnへの線形変換のうち,「直交変換」と呼ばれる特別な写像が存在する. 直交変換とは,線形写像に対応するn次正方行列が,直交行列である場合を意味している.

最もよく知られる直交変換の一つとして次のような回転行列Aが挙げられる.

A=(cosθsinθsinθcosθ) この行列にベクトルxR2を掛けると,結果として原点を中心に角度θだけ回転させたベクトルが得られることが知られている.

実際,x=(1,2),θ=π/2とすると,

(0110)(12)=(21)

となる.これを図示すると以下のようになる.

青い線がxAを左からかけた結果がオレンジ色の線となっていて確かにπ/2つまり90°分回転していることが見てとれる.

また,Aの逆行列A1Aとなる(計算によりすぐに確かめられる).このような性質を持つ正方行列を直交行列と呼ぶ.

Definition 2.11 (直交行列) ARnについて,$A = A = I_n An$次の直交行列と呼ぶ.

行列の積の定義を思い出して見れば,直交行列は自身と同じ行または列との内積が1,自身以外の行または列との内積が0であることを意味している.これが直交の由来である.

Theorem 2.9 (直交行列の性質) 直交行列は以下のような性質を持つことが知られている. いま,P,Qn次の直交行列として

  1. P1=P
  2. PQも直交行列

Exercise 2.5 (直交行列の判定) 次の行列がそれぞれ直交行列であるかどうか判定せよ.