1.7 逆関数の微分
微分可能な関数の逆関数については,全単射の場合,次の定理が成り立つ.
Theorem 1.7 (逆関数の微分) 関数f(x)を微分可能で全単射とする.このときfの逆関数f−1(x)も微分可能であり,
(f−1(x))′=1f′(f−1(x))
が成り立つ.
Proof. 定義よりf(f−1(x))=xより,この両辺を微分すれば良い.
1.7.1 三角関数の逆関数とその微分
sin,cos,tanについて,それぞれ逆関数とその微分を考えてみよう. まず,それぞれ周期関数であるためTheorem 1.7の仮定にある全単射を満たしていない. そこで,全単射であるような定義域と値域を定めた上で逆関数を考えていく.例えば
- sinx: [−π/2,π/2]→[−1,1]
- cosx: [0,π]→[−1,1]
- tanx: [−π/2,π/2]→[−∞,∞]
とすれば,それぞれ全単射となる.これらに対する逆関数をsin−1x,cos−1x,tan−1xと表す. (arcsinx,arccosx,arctanxなどと表す流儀もある.)
さらにこれらの微分については以下が成り立つ.
Theorem 1.8 (三角関数の逆関数の微分) sin−1x,cos−1x,tan−1xの微分について以下が成り立つ.
(sin−1x)′=1√1−x2(cos−1x)′=−1√1−x2(tan−1x)′=11+x2