1.9 微分を活用した関数形の判定

微分とは,関数のある点\(a\)(つまり局所的)の付近で傾きであると紹介した.つまり,その傾きが正(\(f'(a) > 0\))であればその点周りで関数の値は大きくなっているし,負(\(f'(a) < 0\))であればその逆ということが言える.どちらでもない,すなわち\(f'(a) = 0\)の場合は関数の値は一定であると言える.

この性質を利用して次の定理が導かれる.

Theorem 1.9 (単調増加・減少関数) 関数\(f(x)\)が区間\(I = (a,b)\)上で微分可能であるとする.このとき,

\[\begin{align} {}^{\forall}x \in I, f'(x) > 0 \Rightarrow f(x_1) < f(x_2), x_1 < x_2(\in I ) \end{align}\]

が成り立つ.このような関数を単調増加関数という. また同様に

\[\begin{align} {}^{\forall}x \in I, f'(x) < 0 \Rightarrow f(x_1) > f(x_2), x_1 < x_2(\in I ) \end{align}\]

も成り立つ.このような関数を単調減少関数という.

\(f'(a) = 0\)のように微分の値が\(0\)となる場合に言及した次の定義を紹介する.

Definition 1.3 (極大値・極小値) 関数\(f(x)\)\(x=a\)を含むある開区間\(I\)上で

\[\begin{align} f(x) < f(a), x \in I, x \neq a \end{align}\]

が成り立つ時,\(f(x)\)\(x=a\)極大値\(f(a)\)を持つという.逆に

\[\begin{align} f(x) > f(a), x \in I, x \neq a \end{align}\]

が成り立つ時,\(f(x)\)\(x=a\)極小値\(f(x)\)を持つという. 極大値・極小値を区別せずに扱う時,極値という.

極大・極小とは,「極めて大きい・小さい」という意味では無く,「極限」を考えたときに局所的に最大・最小となっているという意味であることに注意されたい. ある点が極値であるかどうかは次のように判定することができる.

Theorem 1.10 (極値と微分) 関数\(f(x)\)が微分可能であり,\(x=a\)で極値を持つとする.このとき,\(f'(a) = 0\)となる.

Exercise 1.6 (極値と微分) 関数\(f(x)\)が微分可能であり,\(x=a\)\(f'(a) = 0\)であるが,極値でない例をあげよ.

さらに,関数の最大値・最小値について次の定理が成り立つ.

Theorem 1.11 (関数の最大値・最小値) 関数\(f(x)\)が区間\([a,b]\)で連続,区間\((a,b)\)で微分可能とする.このとき,\(f(x)\)\([a,b]\)上で最大値・最小値を持つが,その時の\(x\)の値は,\(f'(x)=0\)となる点,または\(x=a,b\)のいずれかである.

Exercise 1.7 (極大値・極小値) \(f(x) = x^2\)について,極値と極値を取る\(x\)の値を求め,グラフで示せ.