1.2 微分とその定義
微分とは,変化の割合をある意味で拡張した概念である.
Definition 1.2 (微分) 関数f(x)について,x=aでの微分とは
limx→af(x)−f(a)x−a
または
limh→0f(a+h)−f(a)h
として定義され,導関数などと呼ばれる.これをf′(x)などと表す. 前者はある変数xを定数aに近づけるという表現で,後者はaとの距離をどんどん小さくするという表現となっており意味するところは同じである.
この極限が存在する時,関数f(x)はx=aで微分可能であるという.また,その値を
- f′(a)
- dfdx(a)
- ∂f∂x(a)
などと表す. (a,f(a)を通る傾きf′(a)の直線を関数f(x)のx=aにおける接線という.
関数f(x)が定義される空間の任意のxについて微分可能である時,関数fは微分可能であるという.
微分は,変化の割合の2点間の距離を極限まで近づけたものと解釈できる.2点間の距離を限りなく近づけた時,それはある一点に収束するだろう.その時の変化の割合はその点でのみ接する直線,すなわち接線とみなせる.
f(x)=x2−4についてx∈[−3,3]を考え,0.2刻みに接線を描画したものが図1.1である.関数fが黒の太線で,細い線で色がついているものが各接線である.
Figure 1.1: 関数の曲線と接点
各線が関数fとの曲線との接点を一つしか持たないことがわかるだろう.これは,どんな曲線もある一点に着目して極限までズームすれば微小区間を直線で近似できるという考えにもつながる.
Theorem 1.1 (微分と連続) 関数f(x)がx=aで微分可能であるとする.このときfはx=aで連続である.
Proof. 仮定より微分可能であるため,(1.1)式より,limh→0f(a+h)−f(a)=0である. すなわち,limh→0f(a+h)=f(a)となり,x=aでfは連続である.