2.3 固有値・固有ベクトルの性質
固有値・固有ベクトルに関する主な性質を紹介する.
Theorem 2.2 (固有値・固有ベクトルの性質) \(A \in \mathbb R^{n\times n}\)とその固有値\(\lambda_1,\cdots,\lambda_n\)について,次の性質が成り立つ.
- 固有方程式\(\det (A-\lambda I_n)=0\)の解は複素数・重解を考慮すると\(n\)個存在する.
- \(A\)の固有値\(\lambda_1, \cdots, \lambda_n\)に対して以下が成り立つ
\[\begin{align} \lambda_{1}+\cdots+\lambda_{n} &= \text{tr}A \\ \lambda_{1}\times\cdots\times\lambda_{n} &= \det A \end{align}\]
- \(\det A=0 \Leftrightarrow A\)が固有値として\(0\)を持つ.
- \(A\)が正則\(\Leftrightarrow\) \(A\)の固有値は全て\(0\)ではない.
- \(A\)が正則とする.この時\(A\)の固有値\(\lambda_1, \cdots, \lambda_n\)として,\(A^{-1}\)の固有値は\(1/\lambda_1,\cdots,1/\lambda_n\)である.
- \(A^{\top}\)の固有値は\(A\)と同じとなる
- 上三角行列・下三角行列\(A\)について,\(A\)の固有値は対角成分と一致する.
- 直交行列\(P\)に対し,\(P\)の固有値は全て\(\pm 1\)である.
- 射影行列\(A\)に対し,\(A\)の固有値は\(0\)または\(1\)である.
- 対角行列\(A\)に対し,\(A\)の固有値は\(A\)の対角成分である.
Exercise 2.2 (固有値・固有ベクトルの性質) 上記の性質のうち,5番目を確かめよう.ある行列\(A \in \mathbb R^{n\times n}\)が正則であれば,\(A^{-1}\)の固有値は\(A\)の固有値の逆数であるというものである. いま
\[\begin{align} A = \begin{pmatrix} 2 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \end{align}\]
とする.この行列の固有値・固有ベクトルはすでに求まっているので,ここでは\(A^{-1}\)を求めて さらにその固有値・固有ベクトルを求めよう.