2.2 固有値・固有ベクトルの計算
固有値・固有ベクトルを求める際は,まず固有値を求め,次にそれぞれの固有値に対応する固有ベクトルを求める,という手順を踏む.
固有値は次の固有方程式から求めることができる.
Theorem 2.1 (行列の固有方程式) A∈Rn×nとする.このとき,
det
を固有方程式といい,固有方程式の解\lambdaはAの固有値となる.
簡単に,A \in \mathbb R^{2\times 2}の場合を見てみよう.このとき
A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix}, \lambda I_2 = \begin{pmatrix} \lambda & 0 \\ 0 & \lambda \end{pmatrix}
である.固有方程式を考えると
\det \begin{pmatrix} a_{11} - \lambda & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} - \lambda \end{pmatrix}
となる.つまり,元の行列Aの対角成分から\lambdaを引いた行列について行列式を考え,それが0となるような変数\lambdaを求めるという問題に帰着する.
2.2.1 固有方程式と固有値の関係
固有方程式は,固有値・固有ベクトルの定義から自然に導かれる方程式である. まず,定義よりA \boldsymbol x = \lambda \boldsymbol xであるので,これを移項すると(A - \lambda I_n)\boldsymbol x = \boldsymbol 0となる. もし行列A - \lambda I_nが正則であれば逆行列が存在して\boldsymbol x = \boldsymbol 0となるが,これは固有ベクトルは\boldsymbol 0ではない という仮定と矛盾する. すなわち,A - \lambda I_nは逆行列を持たず,\det (A - \lambda I_n) = 0であることが導かれる.またその逆も成り立つ. これは固有方程式そのものである.
Exercise 2.1 (固有値・固有ベクトルの計算) 次の行列の固有値を,固有方程式の解を求める手順で計算せよ.
\begin{align} A = \begin{pmatrix} 2 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \end{align}
すでに紹介した通り,この行列の固有値は4, 1でそれぞれ固有ベクトルは(1/\sqrt{2}, 1/\sqrt{2})^\top, (2/\sqrt{5}, -1/\sqrt{5})^\topである.