1.3 確率の公理
集合に対して確率を定義したい.ここでは次のように定義しよう. いま考えたい要素全体の集合を全体集合といいSとする.Sに属する要素をeiと書き, 要素はk個あるものとする(k=∞でも構わない).
この時,P(ei)が一つ与えられていて,
0≤P(ei)≤1,i=1,2,…,kk∑i=1P(ei)=1
が成り立っているとする.これは単にこのようにするという約束事であり,このような約束事を公理と呼ぶ.
いまA⊂Sとして,このAに対する確率を考えたい.すなわちP(A)を考えたいが,これについては
P(A)=∑ei∈AP(ei)
と定める.これは集合に含まれる要素の確率の和であり,自然のように思える. ただし,A=ϕの場合,Aには何の要素も含まれないため,
P(ϕ)=0
とする.また,明らかに
P(S)=1
である.このように確率が定義された集合のことを,事象と呼ぶ. この時注意したいのは,確率を扱う場合には必ず確率を伴う全体集合Sがセットになっているということである. これは言語化してしまえば当たり前のことであるが,例えば,サイコロの出る目(1から6)の確率を考えている場合,よくあるものではP(i)=1/6,i=1,…,6という状況を考えており,確率の公理を満たしている. この時の全体集合はS={1,2,3,4,5,6}となっている.これは,もしサイコロの目が7だったら,とか サイコロを降ったら地震が起こる場合は,とか着目したいもの以外の現象が入る余地を排除しているのである. 逆に言えば,全体集合Sを考える際には,着目したい現象は漏れなく考慮しておくべきなのである.
Exercise 1.3 (確率の公理) サイコロの目1,2,3,4,5,6に対して,確率の公理を満たすように確率関数を定めよ.ただし,同様に確からしい場合,つまり全て1/6となる場合は除いて構成してみよう.