2.5 期待値

確率変数\(X\)期待値(平均)\(E[X]\)の定義を紹介する.確率変数が離散型と連続型とで異なる定義を与える.

確率変数\(X\)の期待値を取ることを記号で\(E[X]\)と表す. 期待値の記号は対象となる確率変数を括弧の中に取るが,計算する場合は確率関数・確率密度関数が必要になるため暗黙的に適切な確率・確率密度を扱うことが要求される.

期待値とは基本的に,実現値と対応する確率の積の総和と捉えられる.

2.5.1 離散型確率変数の期待値

離散型確率変数に対して,期待値は以下のように定義される.

Definition 2.1 (離散型確率変数の期待値) 確率変数\(X\)を離散型とし,その確率関数が\(f(x)\)として与えられているとする. \(\mathcal{X}\)\(X\)が取りうる実現値全ての集合として,期待値\(E[X]\)を次のように定義する.

\[\begin{align} E[X] = \sum_{x \in \mathcal{X}} xP(x) = \sum_{x} xP(X=x) \end{align}\]

2.5.2 連続型確率変数の期待値

連続型確率変数に対して,期待値は以下のように定義される.

Definition 2.2 (連続型確率変数の期待値) 確率変数\(X\)を連続型とし,その確率密度関数\(f(x)\)が与えられている時,期待値\(E[X]\)を次のように定義する.

\[\begin{align} E[X] = \int_{\infty}^{\infty} x f(x) dx \end{align}\]

期待値においては\(x=0\)または\(f(x) = 0\)であるような値については寄与しない. つまり,実際には積分区間は実現値が含まれる区間のみかつ,\(x\neq0\)である点で十分である.

Example 2.2 (離散型確率変数の期待値の計算) サイコロを振って出る目に対応する確率変数を\(X\)とする.出る目の確率は同様に確からしいとして,期待値を計算しよう.この場合\(\mathcal{X} = \{ 1,2,3,4,5,6 \}\)\(f(x) = 1/6\)である.

\[\begin{align} E[X] &= \sum_{x \in \mathcal{X}} x f(x) \\ &= 1 \times \frac16 + 2 \times \frac16 + \cdots + 6 \times \frac16 \\ &= 3.5 \end{align}\]

以上より,サイコロの目を振って出る目の期待値(平均)は3.5となることがわかる.

Example 2.3 (連続型確率変数の期待値の計算) 連続型の確率変数\(X\)を考える.この時,確率密度関数は以下で与えられているとする.

\[\begin{align} f(x) = \begin{cases} 1/2, & -1 \leq x \leq 1 \\ 0, & otherwise \end{cases} \end{align}\]

このとき期待値\(E[X]\)は以下のように計算できる.

\[\begin{align} E[X] &= \int_{-\infty}^{\infty} x f(x) dx \\ &= \int_{-1}^{1} x \frac{1}{2} dx \\ &= \bigl[ \frac{1}{4} x^2 \bigr]_{-1}^{1} \\ &= 0 \end{align}\]

ある関数\(T(x)\)によって確率変数\(X\)を変換したものの期待値は直接\(E[T(X)]\)として計算すれば良い.