1.4 関数の極限
xの値が無限に大きくなるとき,または特定の値に近づく時,関数f(x)の値がどのような振る舞いをするのかを調べたい場合がある. シンプルな関数系であれば,値を入力すれば良いかもしれないが,複雑な関数の場合は直感的に分からない. そこで,関数の極限という概念を導入し,関数の振る舞いを把握するために利用する.
Definition 1.5 (関数の極限) 関数f(x)について,xが限りなく大きく(または小さく)なるとき,f(x)がある値cに限りなく近づくことを
limx→+∞f(x)=c
あるいは
limx→−∞f(x)=c
と表す.また,xがある値aに限りなく近づくとき,f(x)がある値cに近づくことを
limx→af(x)=c
と表す.
f(x)が近づく値cが有限の値であるとき,f(x)はx→a(または+∞,−∞)でcに収束するなどという. f(x)がx→aでcに収束するとき,極限が存在するという.
xをaに近づけるということは,実数直線上であればプラス方向から近づける場合とマイナス方向から近づける場合の2通りが 考えられる.この近づけ方を明確にしたい場合はx→a+0やx→a−0などと表す.これらをそれぞれ 右極限や左極限などといったりする.一般に,近づけ方が異なった時に極限が同じになるとは限らない.
逆にf(x)がx→a(+∞,−∞)で有限の値に収束しない時,f(x)は発散するという. これは
limx→af(x)=+∞(−∞)
のように表す.
中学や高校数学の範囲では,基本的にはlimx→af(x)=f(a)であるような場合が多い. しかし,例えばf(x)=1/xにおいてx→0+0は無限大に発散し,x→0−0は負の無限大に発散し, 近づけ方により極限は異なるし,特定の値に収束しないような関数である.
Exercise 1.1 (関数の収束と発散) x→3の時,正の無限大に発散するような関数fを考えよ.