5.6 極限の性質

関数の極限について重要な性質を紹介する.

Theorem 5.2 (極限の性質) 関数\(f(x), g(x)\)について,\(x \rightarrow a\)において極限が存在するとする.このとき,以下の性質が成り立つ.

  1. \(\lim_{x \rightarrow a} \{ k f(x) \} = k \lim_{x \rightarrow a} f(x)\)
  2. \(\lim_{x \rightarrow a} \{ f(x) \pm g(x) \} = \lim_{x \rightarrow a} f(x) \pm \lim_{x \rightarrow a} g(x)\)
  3. \(\lim_{x \rightarrow a} \{ f(x) g(x) \} = \left\{ \lim_{x \rightarrow a} f(x) \right\} \left\{ \lim_{x \rightarrow a} g(x) \right\}\)
  4. \(\lim_{x \rightarrow a} \frac{f(x)}{g(x)} = \frac{\lim_{x \rightarrow a} f(x)}{ \lim_{x \rightarrow a} g(x)}\).ただし\(\lim_{x \rightarrow a} g(x) \neq 0\)とする.

5.6.1 ネイピア数  

統計学では非常によく見られるネイピア数\(e\)について紹介する.ネイピア数とは以下のような数である.

Example 5.1 (ネイピア数) \(f(x) = (1 + \frac{1}{x})^x\)とする.この極限\(\lim_{x \rightarrow \infty} f(x)\)が存在して,これを\(e\)と表す. これをネイピア数という.

5.6.2 はさみうちの原理

極限そのものを直接求めるのが難しい場合でも,その値の前後の極限を評価することで極限を特定することができる場合がある. このようなテクニックをはさみうちの原理という.

Theorem 5.3 (はさみうちの原理) 関数\(f(x), g(x), h(x)\)について,次の性質が成り立つ.

  1. ある点\(x=a\)の近くで,\(f(x) \leq g(x)\)であれば,\(\lim_{x \rightarrow a} \leq \lim_{x \rightarrow a} g(x)\)を考える.この時以下が成り立つ.
  2. ある点\(x=a\)の近くで,\(f(x) \leq g(x) \leq h(x)\)であり,\(\lim_{x \rightarrow a} f(x) = \lim_{x \rightarrow a} h(x) = \alpha\)とする. このとき,\(\lim_{x \rightarrow a} g(x) = \alpha\)が成り立つ.

特に2の性質をはさみうちの原理という.

はさみうちの原理を利用した例を紹介する.

Example 5.2 (はさみうちの原理) 下図より,

図5.1 はさみうちの原理の利用例

  • 三角形\((0,0), (1,0), (\cos \theta, \sin \theta)\)
  • 扇型\((0,0), (1,0), (\cos \theta, \sin \theta)\)
  • 直角三角形\((0,0), (1,0), (1, \tan \theta)\)

の面積はそれぞれ,\(\sin \theta / 2, \theta/2, \tan \theta /2\)と求められる. また図から明らかに\(\sin \theta / 2 < \theta/2 < \tan \theta /2\)である. この不等式を\(\sin \theta / 2\)で割って逆数を取れば

\[\begin{align} \cos \theta < \frac{\sin \theta}{\theta} < 1 \end{align}\]

を得る.いま面積を考えているので\(\theta \rightarrow 0+0\)を考えると, \(\lim_{\theta \rightarrow 0}\cos \theta = 1\)となり,はさみうちの原理より

\[\begin{align} \lim_{\theta \rightarrow 0} \frac{\sin \theta}{\theta} = 1 \end{align}\]

を得る.\(\theta \rightarrow 0+0\)としていたところから,\(\frac{\sin \theta}{\theta}\)が偶関数であることを用いた.